恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
ちょうど乗ったホテル層へ向かうエレベーターのなかには人が乗っていなかった。
あおいさんが先にエレベーターへ入り、わたしが後から乗ってホテルロビー階である20階のボタンを押してくれた。
二人っきりの空間にとまどいつつ、あおいさんの体からほのかに甘い花のような香りが鼻先をかすめる。
エレベーターの右上にある表示板に映る階数を見ながら、話しかけた。
「あおいさん」
「なあに? 萌香さん」
あおいさんは勢いをつけ、くるりとわたしの方へ顔を傾けた。
「どうしてあおいさんは『カントク』にいるんですか? あおいさんなら秘書課に在籍しているだけでいいのに」
さっきまで輝いていたあおいさんの顔が急に暗くなった。
「拾われたのよ、大上部長に」
「えっ」
あんな怪しさたっぷりの大上部長に拾われたって。
あおいさんは社長令嬢なのに、どうして大上部長に恩義があるんだろう。
もしかして、あおいさんは大上部長と関係があるんだろうか。
特別な、何かが。
考えた瞬間、ズキっと胸が痛くなった。
どうして胸が痛くなるっていうんだろう。
大上部長とあおいさんとの仲なんて関係ないのに。
「くすぶってたことがあってね、そのときに大上部長に出会って『カントク』の仕事を引き受けることにしたの。結局自発的に動いているのはあたしのほうなんだけどね」
大上部長に拾われたって、あおいさんのようなかなり特別な人間なのに。
「時期に『カントク』のよさがわかってくると思うわ」
あおいさんの目は濁らず、まっすぐわたしの疑っている心の中まで気持ちを通してしまいそうな、そんな気迫のある目力をしていた。
『カントク』のよさ、か。
まったくイメージがつかめないけれど、あおいさんの力ある瞳が『カントク』の可能性を示しているのかな、と少しだけわかった気がした。
あおいさんが先にエレベーターへ入り、わたしが後から乗ってホテルロビー階である20階のボタンを押してくれた。
二人っきりの空間にとまどいつつ、あおいさんの体からほのかに甘い花のような香りが鼻先をかすめる。
エレベーターの右上にある表示板に映る階数を見ながら、話しかけた。
「あおいさん」
「なあに? 萌香さん」
あおいさんは勢いをつけ、くるりとわたしの方へ顔を傾けた。
「どうしてあおいさんは『カントク』にいるんですか? あおいさんなら秘書課に在籍しているだけでいいのに」
さっきまで輝いていたあおいさんの顔が急に暗くなった。
「拾われたのよ、大上部長に」
「えっ」
あんな怪しさたっぷりの大上部長に拾われたって。
あおいさんは社長令嬢なのに、どうして大上部長に恩義があるんだろう。
もしかして、あおいさんは大上部長と関係があるんだろうか。
特別な、何かが。
考えた瞬間、ズキっと胸が痛くなった。
どうして胸が痛くなるっていうんだろう。
大上部長とあおいさんとの仲なんて関係ないのに。
「くすぶってたことがあってね、そのときに大上部長に出会って『カントク』の仕事を引き受けることにしたの。結局自発的に動いているのはあたしのほうなんだけどね」
大上部長に拾われたって、あおいさんのようなかなり特別な人間なのに。
「時期に『カントク』のよさがわかってくると思うわ」
あおいさんの目は濁らず、まっすぐわたしの疑っている心の中まで気持ちを通してしまいそうな、そんな気迫のある目力をしていた。
『カントク』のよさ、か。
まったくイメージがつかめないけれど、あおいさんの力ある瞳が『カントク』の可能性を示しているのかな、と少しだけわかった気がした。