恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
たまっていたいろんな気持ちが口から噴出しそうになるけれど、ぐっと抑える。
今は任務中だ。
今すぐにでも津島を止めないと。

「取引を停止して」

「は? 何をいってるんだ」

津島はわたしの言葉にとまどいどころか、しかめっ面をした。

「何か企んでるんでしょ?」

「バカなこというなあ」

と、半笑いしてから津島はビールをあおっている。

「もしかして野村さんの悪知恵なんでしょ。もしかして別の会社とつながっているんじゃ」

「何をバカなこといってるんだよ。『カントク』いって頭おかしくなったのか」

「おかしいのは、あんたのほうよ!」

ついつい声を荒げてしまい、周りにいた関係者の人たちが一斉にわたしと津島に注目していた。

「ただ責任者として出席しているだけだが。おかしいこといってるのは萌香のほうじゃないか」

え、どういうこと? だって社内で動きがあるっていってたよね。

「取引って何をいってるんだよ。創業パーティーで裏取引でも行うってことか? みてみたいよ、そんな現場」

わたし、間違えたってこと?

「それより早く転職したほうがいいんじゃないのか?」

逆に心配かけられているし。
わたしの異変に気付いたのか、別の給仕係の作業班の男性があおいさんを伴ってこちらへやってきた。

「あおいさん……」

「もうここはいいから」

「あおいって、もしかしてあの篠崎……」

「さあ、行きましょう」

あおいさんはわたしの腕をひっぱると、津島から引き離して移動した。
視線に気づき振り向けば、津島はわたしよりもあおいさんの姿をみてニヤリといやらしい笑みを浮かべていた。
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