恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
ガチャっと鍵が開き、四人の男たちが一斉に部屋に入ってきた。
先導をとったのは大上部長で、その後ろを戸塚さん、鈴井さん、横尾さんが連ねた。

「遅くなったな。あおい、椎名萌香」

「大上部長」

津島がひるんだすきに、あおいさんはさらりと体をかわす。
さらに津島をうつ伏せに絨毯に倒し、その上にあおいさんが乗って腕をひねりあげて関節技を決めている。

「大事な部下を傷つけるのはやめたまえ」

「ちょ、ちょっと。あ、あんた……」

野村加奈も驚いたようでつかんでいた手の力が抜けたので急いで戸塚さんたちのもとへ駆け寄った。

「管理部特別課『カントク』部長、またの配属先、社長室長の大上だ」

あの金色の社章バッジはやっぱり社長室のひとだったんだ。

「お、俺は何もしていない。萌香……椎名が勝手に」

「嘘をいうのもいい加減にしなさい。女子を傷つけるのはいけないわよ」

と、さらに腕をひねりあげているあおいさんは嬉しそうに恍惚な表情を浮かべている。
それを冷静に大上部長は腕を組んで見守っている。

「堪忍しろよ。津島」

「……申し訳ございませんでした」

もう少しやりたかったんだけど、としかたなくあおいさんが津島から離れると、津島はすぐに深々と土下座をする。

「もう少しだったのに」

と、苦し紛れに叫び、逃げようと立ち上がった瞬間、黒服の戸塚さんと鈴井さん、守衛姿の横尾さんが走ってきて取り押さえると一緒に出ていった。

「あなたも、わたくしに用事なんでしょ。いきましょう」

と、野村加奈をあおいさんが優しい口調でたしなめると、肩を落としながらあおいさんとともに部屋を後にした。
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