恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
大上部長はわたしの右隣に座り、目を閉じながら事のはじまりを静かに語った。

倉岩コーポレーションは最大手の企業の一つで一度付き合いがあった会社だ。
篠崎のグループ会社が考えていた企画や新事業が次々と倉岩コーポレーションに渡り、不審に思った創業者たちが調査をした結果、社員が裏切り、倉岩コーポレーションへと移っていった。

最近はおとなしくなり、篠崎と肩を並べるようにしていろんな業態に顔を出しては仕事を取り合う仲になっていたそうだ。
アイディアが枯渇したのか、会社が赤字になっているのかわからないが、不穏な空気を放っていた倉岩コーポレーションがまた篠崎を狙っている噂が流れていた。

津島が事業部の責任者に昇格したのを見計らい、新しい事業をはじめようとしたところで倉岩コーポレーションの営業が話に乗っかってきた。

津島が一緒に連れていた野村加奈ではないお相手の倉岩コーポレーションの営業の女が巧みに仕組んだ作戦だったらしい。

また野村加奈は倉岩コーポレーションの幹部の愛人だったらしく、敵陣に入って状況を随時報告をしていたそうだ。

お互いの利害関係が一致していた津島と野村加奈は気づけば恋愛感情が芽生えて、お互いの秘密を共有し、かつ、任務を遂行して報酬を得ようとしていた。

わたしが『カントク』に入れさせたのも、津島が課長に話し、顔がきくのを利用して人事部に駆け寄ったそうだ。

わたしを『カントク』に入れ、いずれはどこかでわたしと接点を結び、目的のあおいさんとの交渉を進める内容だった。

結局、津島と野村加奈がわたしをダシにして甘い汁を吸おうとしていただなんて。
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