【短ホラー】そのページのむこう
「はぁ、瀬戸口さんが中々帰してくれないから遅くなっちゃった……」

瀬戸口とは彼女の上司で、酒が入ると壮絶に長い説教を始めるという典型的な迷惑上司だ。


その瀬戸口が酔い潰れて眠ったあと、やっと彼女は家路につくことを許された。


しかしすでに午前1時をまわった住宅街は、湖面のように緩やかに寝静まっている。



(ケチらずにタクシー呼べばよかった)


暗い夜道に響くのは彼女の低いヒールの足音と、衣擦れの音だけだった。
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