クラリネット吹きはキスが上手いのかという問題について
「灯里さんは、いつから楽器やってるんですか?」

麻生くんの問いかけに我に返る。

「小学校の時に、親にバイオリン習わされてたの。練習あまりしてなかったから上達遅かったけどね、ハハ」

「へぇ」

「高校で弦楽部に入って、ビオラの渋さに目覚めたんだよね」

まさか、勧誘してくれたビオラの男子先輩がかっこよかったから入部してビオラに転向したとは言えない。
あたしの人生こんなんばっかだな。

「短大の時に今のオケに入ったんだ。麻生くんは?」

「中学高校と吹奏楽やってました。大学からオケ始めたんで、まだクラシックはペーペーで」

「そんなことないよ! シェヘラザード、めっちゃうまいじゃない! いつも感心して聴いてるよ〜」

「ありがとうございます。調子乗りそうです」

彼は恥ずかしそうに笑った。

「地元はこっち?」

「はい」
と、彼は隣の市の名前をあげた。

「高校は?」

隣の市にある、超有名私立高だそうで。
野球部強くて甲子園の常連だ。

あれ、待てよ。
野球部だけじゃない。

「そこの吹奏楽部、すんごいレベル高いよね?」

「あー、まあ、そうですね」

わー、そんなとこの吹奏楽部で吹いてたなら、そりゃ上手いわ!
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