クラリネット吹きはキスが上手いのかという問題について
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で、打ち上げ終了後。
ほろ酔い気分で外に出たら、麻生くんに捕獲され、彼の車に乗せられた。
麻生くんはお酒飲んでないらしい。
四駆だから席が高くて見晴らしがいいなぁ。
車内はキレイで、余計なものは置かれていない。車の中って性格出るよね。
キョロキョロしていると。
「よかったらどうぞ」
フリスクを寄越してくれた。
お、気が利く。
「ありがと」
「灯里さん、実家暮らしでしたっけ」
「うん。妹に迎えに来てもらうはずだったんだけど、断ったから、送ってもらえると助かるかなー」
「明日はお仕事ですか?」
「そうだよ。遅番だけどね」
「俺も仕事です。音が頭に溢れてて、ちゃんと仕事できるかなぁ」
「あはは、わかる、それ。あたしも本番の次の日は地に足がつかない感じする」
あぁ、いいな、この雰囲気。
たぶんお互い好意を抱いてるんだろうけど、その探り合い。
うーむ、恋の始まりはこんな感じだった気がする。
「で、どうでした?」
麻生くんの言葉に、さっきの本番を思い出す。
演奏中には姿は見られなかったけれど、澄んだ音色は耳に残ってる。
あたたかい、と感じるのは、クラリネットという楽器の特性なのか、それとも、演奏者の個性なのか。
ノーミスなのはもちろん、めちゃくちゃ上手いヴァイオリンやチェロのソロ、他の管楽器ソロと比べても遜色ない、気迫に満ちた演奏。
本番独特の緊張感の中で、あれだけの演奏ができるって、ほんとにすごい。
さすが、元名門吹奏楽部一軍。