クラリネット吹きはキスが上手いのかという問題について

「灯里さん、俺と付き合ってくれませんか」


わー、直球。

あまりにもベタなセリフに感心して何も言えずにいると、たたみかけられた。

「年下は嫌ですか?」

「……嫌ではないけど……、」

今後を見通した上で焦らしちゃおうかななんて思ってます。
立場は上でありたい、ワガママな年上女です。


ところが、そうは問屋がおろさなかった。

彼はとんでもない言葉を投げてきたのである。

「キスやセックスが下手なんじゃないかと心配してますか? 灯里さん、実は結構肉食系でしょう?」

「はっ⁈」

なんちゅーこと言うんだこの子!
いやいやそれよりも!

「どこからそんな話を!」

コンバスのあいつか⁉︎
ホルンのあいつか⁉︎

「いえ、アンサンブルコンサートでのカルテット聴いて、ご自分の欲求や主張は素直にあらわす人なんだなぁ、って思っただけです。どうやら当たりですね?」

ぎゃっ!
……音楽っておそろしい。



さらに、彼は真面目な顔して、のたまったのだ。


––––––「俺、クラリネット吹きなんで、キスには自信あるんです。試してみますか?」

と。

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