クラリネット吹きはキスが上手いのかという問題について

◇◆◇

パーカーにジーンズ。スニーカー。
をを。ザ・草食系大学生。

クラリネットの彼がキョロキョロしてるので、あたしは営業スマイルで声をかけた。

「いらっしゃいませ!」

彼はあたしを見て、びっくりした顔をして、一歩後ずさった。

「こんにちは……」

「ほんとに来てくれたんだ! ありがとね!」

「いえ……どうせ買わなきゃとは思ってたんで……」

ぜひうちでどうぞ!
なんて色気は隠して、

「見るのも着るのもタダだから、どんどん試してみてくださいね? 今日買わなくても、別の店で買ってもいいですから」

なんて言ってみる。


◇◆◇


……あらまあ。

あまりの変身ぶりにびっくりした。

試着室のカーテンを開けた彼は、あたしがおすすめした細身の紺のスーツを着ていて。

……やばい。萌える。

ひょろっと、が、すらっと、に見えるんだから、やっぱりスーツってすごいわ。

「よくお似合いですよ」

営業スマイルを浮かべると、少し頬を染める彼。
うん、年下、ちょろいな。

採寸のため、少し身体に触れただけで、ビクリとしている。
おや。触られるの、慣れてないのかな?
うふ、かわいいー。

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