復讐の女神
「お前はここで待ってて欲しい」
そう言うと片山父はシートベルトを外し始めた。

「な、なぜここに・・・」

「もしかしたら、ここに涼がいるかもしれない」

「そ、それでしたら自分も」

「いや、ここに残れ。」

そう言うと片山父は車から出て森の中に足を踏み入れた。

彼には思惑があった。
警察よりまず先に涼を見つける必要があった。
万が一、彼の口から自分のしつけの話が出たら世間体が悪くなる可能性があった。
そして、まだ涼は見つかっていない。
人目を避け、もし今でも生きていたらこの森の中にいると踏んだのだった。

茂みの中を暑苦しいスーツで進んでいくのは、思った以上に至難だった。
息を切らしながら進んでいると何やら子供の話し声が微かに聞こえてきた。

その声のする方に片山父は歩みを進めて行った。

その頃、小川が流れている場所に辿り着き、ゆりと涼はそこで休憩を取っていた。

涼は心配になってゆりに尋ねた。

「ねぇ、ゆりは戻った方がいいよ。そろそろ日が暮れるよ」

ゆりは、小川の水を飲み、喉を潤すと
「大丈夫だよ!涼くんと一緒にいる!」と
疲れた表情も見せず、笑顔で応えた。

涼はその顔を見てホッとすると「じゃぁ、行こうか」と言った。
その時だった。

「涼か?」

という声がして二人はその方を振り返った。

そこにいたのは、1人の中年男性だった。
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