復讐の女神

ゆりが無事家に届けられると母親はゆりを力強く抱いた。

「本当に良かったわ・・・」

「お、お母さん、それよりも聞いて欲しいことが・・・」

「娘さんは一人で森の中にいたんですよ」
片山父はゆりの言葉を遮り、話をし始めた。

「森の中で迷子になっていたので、今後は気をつけてください」

「あぁ、なんとお礼を言っていいか・・・」

ゆりの父が頭を下げると、片山父は遠慮がちに
「いえいえ。私も息子を探していたもので・・・・」と応えた。

「息子さん？まだ見つかってないのですか？」

「えぇ・・・」

ゆりは、片山父の嘘の証言に驚き、彼に歯向かうように訴えた。

「うそつき！涼くんを見捨てたじゃない！涼くんはまだ森の中にいるのよ！
早く探して！

「ゆり、あなた何を言ってるの！急に声を荒げて・・・」

「では、これで・・・」

そう言って、片山父が踵を返し、車の中に乗ろうとした時だった。

たまたまゆりの家の前を
通りかかった近所の人が
「まだ、若いのに可哀想ねー」と会話をしていたのが聞こえてきたので
思わずゆりは近づいて行って声をかけた。

「ねぇ、どういう意味！？なにかあったんですか？」

ゆりは、嫌な予感がした。

すると近所の人はゆりを見て、みんながいる方を見ると
「男の子が遺体で発見されたのよ。川で溺れたそうなの」と言った。

「え！？イタイって何？」

「死んだってことよ」

「え？死んだ？誰が？」

ゆりは、訳が分からず近所の人に質問をした。

「涼って名前の男の子よ。今、警察が彼の住んでた別荘に運んだそうで・・・」

その言葉にゆりは全身の力が無くなり、その場にしゃがみ込んだ。

片山父は部下と目を合わせるとすぐさま車に乗って別荘へと向かった。

ゆりは、母親にしがみつくと「ゆりも見に行く！」と言って凄んで頼んだ。

「何を言ってるの・・・」

「お願いだから！連れてって！」

「何を言ってるのよ。遺体なんて子供の見るものじゃないわ。
誰だかわからない子のところに行く必要ないのよ」

「嫌だ！知ってる子だもん！ずっと一緒にいたんだもん！お願いだから連れてって！」

ゆりは泣きじゃくった。ゆりの両親は訳が分からなかったが
尋常じゃないゆりを見て、両親は近所の人に詳細を聞くと片山家の別荘へと向かった。