復讐の女神
ゆりの家族が現場に到着すると片山別荘の前には人集りが出来ていた。

「あ、ゆり!どこ行くの!待ちなさい!」
母の声も虚しく、ゆりは人集りの中に入っていくと
警察の目を盗んで立ち入り禁止のテープをくぐり、中に入っていった。

すると庭に人が集まっているのを確認し、恐る恐る後ろから近づいていった。

みんなが泣いていた。

ゆりは自分より少し小さな男の子が
年配の女性に抱かれながら泣いているのを見た。

片山父が警察と話していた。
「辛いでしょうがご確認お願いします」
そう言うと警察はゆっくりと布を捲った。
その下には変わり果てた涼の姿があった。

ゆりは両手で口を塞ぐとそのまま涙を流し始めた。

「小川に浮かんでいるのを発見しました。お悔やみ申し上げます」

「はい、ありがとうございます。
私が不甲斐ないばかりに息子を死なせてしまい・・・」

「息子さんは家出をなさっていたとか・・・」

「はい。私が少しきつく叱ったせいでこんなことに・・・」

「捜索願いが出されなかったのはなぜです?」

「すぐ戻ってくるとは思いまして・・・」

「あの、もう少し詳しくお聞かせ願いませんでしょうか。」

片山父はその警察官を見ると真剣な面持ちになり、
「刑事さん、あなたの上司には既に事の顛末をお話ししているのです。
これ以上はそちらでご確認願います。」

そう言うと踵を返し、建物の中に向かって歩き始めた。

ゆりは、歩いてくる片山父を目で追った。
そしてちょうど彼がゆりの横を通り過ぎようとした時、ゆりは勇気を出して大声で叫んだ!

「うそつき!おじさんが涼くんを殺したんだ!!」

みんなが一斉にゆりの方を向いた。

部下が片山父の方にすぐ駆けつけた。
片山父は部下に「すぐに連れ出せ」と命令すると部下はゆりの肩を持って
「何を言ってるんだね、お嬢ちゃん。ささ、おじさんと外に出よう」と言って
ゆりを外に追い出そうとした。

「嫌だ!離して!」とゆりは抵抗するが
そのまま部下に抱っこされ、無理やり外に連れ出されそうになった。


「大きくなったら学校の先生になりたいな」

かつて、ゆりに夢を語った心優しい少年はもうこの世にはいない。
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