復讐の女神
そして、片山父はそのまま別荘へ進んでいった。

彼の部下に抱き抱えられ、無理やり外に連れ出されそうになっても、
ずっとゆりは彼の背中を見ながら睨み続けた。
怒りで堪えきれず涙が一筋、一筋とゆりの頬を伝った。

悲しい顔をした涼の顔が目に浮かんだ。

「僕は本当の子じゃないから、どんなに良い点を取っても
親に褒められたことがないんだ」

「仕方のないことなんだよ。僕だけ血が繋がってないから。
それでも僕は家族のことが好きなんだ」

「だからあんなお父さんでも僕は好きなんだ」


ゆりは目を瞑りながら昔のことを思い出していた。



許さない。
あんな純粋で優しい子の命を奪っておきながら
のうのうと生きてるんんて、
絶対に許さない!

本当は、父親の方を殺そうと思っていた。
けれど、それだと大事な人を失った悲しみと地獄を思い知らせることが出来ないと考えた。
だから、あいつが大事にしている息子を、片山弘樹を殺そうと考えた。
だから、私は、あいつに復讐するため、片山係長に近づいた。

ゆりは一つ深呼吸した。

涼くん、やっとよ・・・。
ついにこの時が来たの・・・。
やっと涼くんの恨みが晴らせる時が来たのよ。

ゆりは意を決すると目を開いた。
目の前には眠りについた片山課長が横たわっている。

「ごめんね、弘樹さん。あなた自身には恨みはないけど
これもあなたの父親に復讐するため。あなたには死んでもらうわ」

そう言うとゆりは思いっきりナイフを振り降ろした。
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