復讐の女神
「早く出ろ」

「え？」

片山課長に命令され戸惑っていると
「早く出ないと疑われるだろ」と
更に追い討ちをかけられ、
ゆりは仕方なく扉の方に向かって歩き始めた。

恐る恐る解錠をして扉を開けると
そこには森村が立っていた。

「も、森村さん・・・」
「な、なんで七瀬さんがここに・・・」

お互い驚いていたが、森村はハッとすると
すぐに部屋に押し入り、そのまままっすぐ
片山課長のいる場所まで入ってきた。

「どういうことですか！ちゃんと説明してください！」

ゆりも訳が分からず森松の後を追って、
彼女の後ろから片山課長を見た。

「弘樹さんから着信があったから来たんです。何かあったのかと思って・・・。
なのになんで七瀬さんがここにいるんですか！？」

すると片山課長は「見ての通りだよ。」と言うと
彼は悪びれもなく話し始めた。

「彼女は俺のことが好きだと告白してきたんだ。
もちろん断った。俺には君という婚約者がいるから。
だが、彼女がなかなか引き下がらないから困り果てて。
だから花澄を呼んだのは七瀬さんを宥めて欲しいと思ったからなんだ」

すると森村は物凄い剣幕でゆりを睨んだ。

彼の嘘八百に一番驚いたのはゆりだったが
彼女が何か反論する前に、森村の平手打ちが飛び
ゆりは思いっきり頬を打たれるとそのままその場にしゃがみ込んだ。

ゆりは叩かれた左頬を手で押さえた。

「どういうつもりなのよ！人の婚約者に手を出すなんて！
なんて最低な女なの！
ずっと我慢してたけど限界よ！早くここから出てって！」

そう罵倒され、ゆりの目に涙が滲んだ。

最悪の展開だった。
復讐も失敗し、逆にだまし討ちにあった。

ゆりは、ゆっくりと立ち上がるとそのまま踵を返し、
片山課長の部屋を後にした。

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