復讐の女神
ゆりが部屋を出ると、森村は安堵したのか
片山課長の隣に腰掛けると彼に抱きついた。

「本当は旅行中も心配だったんです。あの人ずっと弘樹さんのことを見てるし、
それに2人が浮気してるって噂もあったので・・・」

片山課長は、そっと抱き寄せると「心配かけてすまない」と声をかけた。

「もう俺は大丈夫だから部屋に戻っていい」

「嫌です!」

森村は顔を上げると片山課長を見上げた。

「今日は、ずっとここにいさせてください!
私、本当に不安でたまらないんです。」

そう言うと森村は涙を流した。

「何が不安なんだ?」

「なんで私を突き離すんですか?私は婚約者なのにまだ一度も
弘樹さんに抱かれたことないんですよ!」

「今は社員旅行中だ。
みんなの目があるからそれは避けたいと言ったはずだ」

「でも、じゃぁいつなら平気なんですか?」

「今度・・・。今度、二人で過ごす時だ・・・」

「待てません・・・。私、本当にどうにかなりそうです」

そう言って涙を流す森村を見て、片山課長は彼女の頬に手を触れると
涙を拭い、彼女の唇にフレンチキスをした。

今日は一段と色っぽい彼の顔に見惚れ、森村は泣くのを止めた。

「花澄には悪いと思ってる。けど、体裁というものがあるんだ。
今日はこれで我慢してくれ」

そう言うと森村を立たせ、部屋に戻るよう促した。

森村はもう一度彼の方を振り向くと諦めたように自分の部屋に戻っていった。

片山課長は彼女が部屋から出るのを見届けると
枕の下を捲った。そこには咄嗟に隠したゆりの落としたナイフがあった。

片山課長はため息を一つつくと、そのナイフを自分のカバンの中にしまった。
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