復讐の女神

復讐の果てに

18；10、ゆりは遅れて片山邸宅を訪れた。
会場は超満員で婚約パーティーも既に行われていた。

前方の壇上の上にはドレス姿の森村と高級なスーツを身に纏った片山課長が立っていた。
司会者の人に促され、片山社長が前の方に歩いていくと
マイクスタンドの前に立ち、祝いの言葉を話し始めた。

「今日は、二人の婚約パーティーにご出席頂き誠に有難うございます。
二人がこの度結ばれることとなり、父としても感無量でございます」

会場全員が片山社長の言葉に聴き入ってる中、1人ゆりは恐る恐る前の方に歩みを進め、
遂に壇上の上に立ち上がった。

会場が一斉にざわつき始めた。
森村と片山課長も驚いて、ゆりの方を見た。
ゆりは周りのどよめきに臆することなく片山課長に近づくと
カバンからナイフを取り出し、彼の喉元に近づけた。

「な、なんの真似だ！」

マイクの前で片山社長が怒鳴ると
「動かないで！！」と声を上げた。

「一歩でも動いたらこの人を殺す」

会場内にいた社員のみんなもこの光景に驚きを隠せなかった。

「里帰りするのかと思ってたけど失恋の腹いせにあんなことするなんて。
七瀬さん、とうとうとち狂ったのね・・・」
一柳がそう言うと

「これが七瀬さんの本性だったのか、怖ぇな」と
太田も呟いた。

「何が目的なんだ！」マイクスタンドの前にいる
片山社長が叫んだ。

するとゆりは、話し始めた。

「30年前、あなたは涼くんを見殺しにした・・・。」

「涼・・・？」

「覚えてないはずはないわよね。30年前、行方不明になった女の子を見つけ、
涼くんを森の中で1人置き去りにした・・・」

「じゃ、じゃぁ君はあの時の・・・」

「それだけじゃない！涼くんはもっと心に深い傷を負った。
あなたのせいで！！あなたが涼くんに与えた数々の卑劣な仕打ち！
私は許さない！涼くんのため、私は復讐するためにここに来たの。
私から大切な人を奪ったあなたに復讐するため、
あなたの大事にしている息子をこの手で殺すわ！」