復讐の女神
「そ、それだけは止めてくれ!
殺すなら私を殺せ!」

「それじゃ、意味ないでしょ?
大切な人を奪われた苦しみ・・・あんたにも思い知らせてやる」

ゆりは、腕を少し上げ、ギリギリまでナイフの刃を
片山課長に近づけるとゆりは彼の方を見上げた。

唇を噛み、苦しみを堪えてるゆりの強気な表情を見て
片山課長は同情するような優しい眼差しでゆりを見下ろした。


すると突然、片山社長から思わぬ言葉が飛び出した。
「すまなかった・・・」

「え?」

「涼のことすまなかった・・・。私がもっと涼を可愛がっていれば
あんなことにはならなかった。悪かったと思っている・・・」

ゆりは思いも寄らない片山社長の謝罪の言葉に驚くと
取り乱したように彼女は泣きながら訴えた。

「すまなかった・・・ですって?謝って済む問題!?
謝ったって涼くんは二度と戻らないのよ!!!」

「確かにそうだ。けど、涼も君の復讐を望んでないと思うよ」

そのセリフにゆりはハッとし力が抜け、今までの勢いが無くなると
ゆっくりとナイフを持つ手を下ろした。

その隙を見計らい片山社長は大声で
「その女を取り押さえろ!!」と叫んだ。

片山社長の側にいた部下達が一斉に
ゆりに近づこうとした瞬間、
ゆりの隣にいた片山課長が彼女の手を握ると
彼の父親の方に向かい一歩前に進んだ。

「父さん、紹介が遅くなりすいません」
そう片山課長が前置きすると
「紹介します。彼女が俺の婚約者になる七瀬ゆりさんです。」と言った。


「え!?」
ゆりは素っ頓狂な声を上げて片山課長の方を見上げた。

「お前は何を言ってるんだ」
呆れて片山社長がそう言うと

「今日の婚約パーティーは彼女との婚約を発表するためのものです。
お許しください」

「弘樹さん!さっきから何を言ってるんですか!?」
彼の隣にいた森村も訳が分からず声を荒げた。

「すまない、けど前から決めてたことなんだ。
このためだけに森村さんを利用したこと悪かったと思ってる」
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