復讐の女神
休憩が終わる10分前になった。

ゆりは本を閉じると混雑を避け、
空いている24階のトイレに向った。

ゆりの居なくなった事務所で太田が石井に声を掛けた。

「マジ、どうしたんすか?」

「いやーお世話になってた取引先を他社に取られた」

「うわ!マジ、やばいじゃないすか!どこっすか、そこ」

「A社。」

「うわ!なんでまたそんな金づるを・・・」

「他社の方の料金設定が魅力だったんだと。
さっき片山課長には報告したけど・・・」

「こっぴどく叱られたんすか?」

「いや、あの人怒んないから。逆にここまでA社と取引出来てたのは
お前の営業のお陰だって褒めてきて・・・。逆に怒ってくれた方が良かった。
マジ俺情けねー」

そう言うとまた石井は机の上に突っ伏した。

「あの・・・石井先輩」

顔を腕の中に埋めたまま「なんだ?」とぶっきらぼうに応えた。

「七瀬さんなんですけど・・・」

石井は七瀬という言葉に過剰反応を示すため
彼はセンサーで感知したかのように顔を上げた。

「あの人、なんか不思議じゃないっすか?」

「え?」

「いや、なんか…あんま大人っぽくないっていうか。」

「そこが彼女のいいとこじゃないかよ」

「いや、そうなんですけど。なんか、不思議っすよね」

「そうか?」

「なんか、ミステリアス?」

「そりゃ、まぁ、昨日の今日だし、まだわかんねーよ。
けど、そのうち本性表したりしてな!」

「めっちゃ怖かったりしてー」と

二人で会話が盛り上がってる中、当の本人が席に戻ってきた。
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