復讐の女神

「あ、あのー片山課長ってここの社長のご子息って本当ですか？」

「え？」

突然の質問に片山課長は一瞬驚いたがさほど気にすることなく
「あぁ、そうだよ」と応えた。

「あ、あのー社長ってどんな人なんですか？」

「え？社長？まぁ、厳格な人だよ。俺に期待を置いてるのは分かるが
少し手荒い部分もある。コネで入社出来ないと分かった時は流石に反抗したな」

「え！？自ら望んでコネ入社を断ったんじゃなかったのですか！？」

「まさか、出来るなら楽して入りたいだろう」と
どこまで冗談でどこまで本心なんだか分からないことを言って
片山課長は意地悪そうに笑った。

もし、本心だったとしてその事を一柳が知ったらガッカリするだろうなとゆりは思った。

「あ、でもそれだけ大事にされてるってことですよ！もしかして一人息子ですか？」

「え？あぁ、まぁそうだが」

「やっぱり・・・」

的中したのも束の間、

「七瀬さんはさっきから俺の家族のことばっか聞いてるけど
もしかして俺に興味でもあるのか？」

「へ！？」

口角を上げ、人をからかう様な流し目で片山課長はゆりを見下ろした。
その表情があまりにも色っぽく内心ゆりは怖気づいた。

「あ、いえ、その。違いますよ」

「悪いけど俺、婚約者がいるんで。一応言っておく」

「だから、違いますってー」

「分かってるよ。好きな人がいるんだろ？」

「え？」

なぜ、それをと言いかけたが
「一柳が言ってた。みんな知ってる」と
片山課長がその前に応えた。

「えーーー！」

「あいつには気をつけろよ。噂話に敏感だからな」

そう言うと片山課長は、飲み干したコップをゴミ箱に捨て
「休憩もほどほどにな」と言ってその場を後にした。