復讐の女神
ゴールデンボンバーの歌が終わると今度は加藤ミリヤの曲がかかった。

「え?これ誰が選曲したの?」

周りがざわつくとゆりは恥ずかしそうに「私です」と応え
マイクを手にした。

「七瀬さん、加藤ミリヤ歌えるの?」
「ってか、いつの間に選曲してたの?」

女性陣がヒソヒソと話をしている中ゆりは気にすることなく
加藤ミリヤのxoxoを一生懸命に歌い始めた。

その姿が愛らしくて微笑ましくて
隣にいた石井は気付いたらゆりの方を見つめていた。
可愛らしいゆりに目を奪われていた。

タバコの火が石井の指を少し焦がし
「アチッ」と言うまで彼はゆりに見とれていてタバコの存在に気づかなかった。

石井は彼女の歌をそばで聞きながらこう思った。
片山課長がなんだ。
俺が絶対七瀬さんをモノにすると。


カラオケが終わり、終電間近となり各々がそれぞれの家路へと急いだ。

「んもー終電逃しちゃいましたよー!」

酔っ払った星は一人で歩くことも出来ず山田に支えられていた。

「俺はめぐっちょを送って行くんで石井先輩は七瀬さんを送ってください」と山田が言うと
2人を残して山田と星は駅とは反対方向に足を進ませた。

残された二人は動揺していた。
特にゆりはこの後無事に家に帰れるか不安に思った。

「七瀬さん、送ります」

そう言われて、ゆりは一瞬ドキッとしたが
平静を保ちながら恐る恐る石井の顔を見上げた。

石井は175cmある為、上から彼の優しげな目で見下ろされると
ゆりは不本意ながらドキドキするのであった。

「私、一人でも大丈夫ですよ」

ゆりは強がった。けど、石井がそれを許さなかった。

「何言ってるんすか。女の一人歩きは危ないですよ。
俺が家まで送りますから」

家まで・・・という言葉が妙に引っかかった。

だけどゆりは気にせずに「ありがとう」と応えると
彼と一緒に駅へと向かった。

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