復讐の女神
なんで笑われてるのか分からずゆりがキョトンとしていると

「今時、恋人同士じゃなくても、ちゅーくらいしますよ。
七瀬さんってウブっすね」

石井は愉快そうに笑うがそれでもゆりは「ダメです」と
もう一度応えた。

「私は、付き合ってもいないのにそういうこと出来ません」

ゆりが頑なに拒むので石井はムッとして
もう一度指でゆりの唇に触れた。

「良い子ぶるのも止めてくださいよ。七瀬さんは俺よりも年上なんですから
経験も豊富なんでしょ?教えてくださいよ、俺に。大人のキスってやつを」

すると石井が顔を近づけてきたので
ゆりは手のひらで制した。

「石井さんこそ、いつまでも酔いに任せて勝手なことしないでください。
私はそんな経験してませんよ。遊びでキスなんかしたくないです」

ゆりが真剣な顔して言うので、石井は驚きゆりから顔を離した。

石井が悔しそうに顔を背けると
「俺だって別に遊びでチューしたいとか思ってないっすよ。
七瀬さんが可愛いからついからかってみたいというか。
アルコールの力を借りないと俺、なんも出来ねー」
そう愚痴るように言いだした。

ゆりが心配そうに「石井さん?」と聞き返すと
彼はもう一度お茶を啜ってからゆりの方を見た。

「七瀬さん」

「あ、はい」

「俺、七瀬さんのこと・・・」


「・・・」
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