復讐の女神
山田は170cm位しかなかったが、ゆりとの身長差は10cm弱あったため
少し彼女の方を覗き込むように話をかけた。

「このビル広いからエレベーターの場所分からなかったでしょー。
色んな会社が入ってるビルだから結構でかいし、夜景も綺麗なんすよ。
あ、ってか俺、山田翔平って言います。君が今日入ってくる23歳の方?」

「はい、大分迷いましたね。ここまで辿り着けてとりあえず一安心です。
山田さんですね?よろしくお願いします。因みに私は七瀬ゆりと申しまして
年は23じゃないですよ」

「え?」

そうこうしてるうちに、二人は事務所に到着した。
中に入ると既に自分よりも大分若い女の子と凛々しい男性が前に立っていて
彼らに視線を向けるように何人かの社員が集まっていた。

「あ、来ましたね」

そう言うと片山課長はは七瀬ゆりに近づき
「皆に紹介しますのでこちらへ」とゆりをみんなの前に案内した。

「こちらが今日から派遣社員として石井のチームのアシスタントを行う七瀬ゆりさんだ」

紹介を受けてゆりはみんなに挨拶をした。
「七瀬です。商社での仕事経験はないですが早めに仕事を覚えて皆様のお手伝いが出来るよう頑張りますので
どうかよろしくお願いいたします」

お辞儀をすると周りから拍手と男性陣からの盛大な歓声が上がった。

「では、業務内容は各々のチームリーダーに任せておりますので
星さんは山田さんのところで、七瀬さんは石井さんのところで」と説明すると
片山課長はその場を後にした。

すると彼女の隣にいた背の低い茶髪の若い女の子がゆりに声をかけた。
「私、星めぐみって言います!七瀬さん、よろしくお願いします!」

とても可愛らしい笑顔だった。男ウケしそうだなとゆりは心の中で思った。
「私こそよろしくお願いします」

そう言うと今度は石井に声をかけられ、ゆりはその方に顔を向けた。

「石井と言います。何か分からないことがあれば自分に色々聞いてください。
よろしくお願いします。」と、丁寧に挨拶をする彼に
若いながら随分と頼もしいなとゆりは心の中で思った。

「私こそよろしくお願いします」

笑顔で応えると石井は内心嬉しそうに笑った。
石井は内心彼女が同じチームで良かったと思っているに違いないのだが
あまりそういうのを彼女の前で見せるのは恥ずかしいと思い、余計な反応は避けたのだった。
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