復讐の女神
ゆりはオフィスに向かった。
そんなに急いでいないのにあの場から逃げるように出てきたため
少しばかり息が切れていた。

胸が苦しい。
なんであんなにムキになってしまったのだろうと
ゆりは思った。

不意にオフィスの入り口の前でゆりは立ち止まると
両手で自分の顔を覆った。

婚約者がいるって言ったくせに
どうしてこうも私のことを気にかけてくるんだろう。
私なんて恋愛の対象でもないくせに
どうして偉そうに忠告してくるんだろう。
どうして・・・?

ゆりは、片山課長の不可解な言動に理解できず
無性に腹が立ったのだった。

「私よりも年下のくせに」

ゆりは、手を下ろすと顔を上げ歩き始めようとした。
けど、彼女はふとある事を思い出した。

「飲み会の時のお礼してない・・・。
そしてさっきも。私を心配して言ってくれたのに
なんで私、強がったりなんか・・・」

冷静に考えると片山課長はゆりを気にかけてくれる
優しい男性なのであった。

「あぁ、私何してるんだろう」

そう思うとゆりは少し落ちつきを取り戻し
逆に後悔の念が起きた。

このまま戻って片山課長に謝ろうかと思った瞬間、’
不意に名前を呼ばれてその方を振り向いた。
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