復讐の女神
「七瀬さん!」

石井はゆりのもとに駆け寄ってくると
呼吸を整えながらゆりに話しかけた。

「七瀬さん!」

「石井さん、どうしたんですか?そんなに急いで・・・」

「あ、あの、俺デカイ案件受注したじゃないですか」

「あ、はい。それが何か・・・」

「受注祝いしません?」

「受注祝い?」

「二人で」

「え!?」

突然の提案に訳が分からず、ゆりが黙り込んでしまったので
遠回しの誘いではダメだと判断した石井は
「サシ飲みしませんか?」と言い直した。

「さ、サシ飲みですか?」

「ダメですか?」

石井は真正面からゆりを見下ろすように見つめた。
その熱い眼差しに耐えきれなくてゆりは目を逸らした。

石井は積極的なアプローチをして何度も
ゆりを困らせていたため正直彼女は返答に困っていた。
それを察したのか石井は頭を掻くと
「今度は俺、あまり飲まないようにするんで」と言った。

ゆりは彼を見上げると石井は真剣な顔をして彼女に言った。

「この前はそのー酒を飲み過ぎて理性が効かなくなったと云いますか・・・。
とにかく俺今度は飲むの調整しますんでもう七瀬さんに迷惑はかけません」

そして石井は目を逸らした。

ゆりは彼の表情を見ながら色々と考えていた。

男は、嘘をつく時目を逸らし、女はその目を捕えると云う。
ゆりは、なんとなく石井が嘘をついてる気がして即答出来なかった。
けど、また同時に片山課長の忠告を思い出していた。
ゆりはどっちを信用しようか迷った挙句、
ゆりは感情を優先して判断してしまった。

「良いですよ、是非行きましょう」

ゆりは笑顔を作るとそう石井に言ったのだった。
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