復讐の女神
「お前が間違った方法に向かわんよう、
俺が道を指し示してるのが分からんのか。
私はいつだって弘樹を一番大切にしてきた。
お前を立派に育てるためにな」

「十分くらい分かってるよ。
あの事件のことも」

あの事件?

ゆりは、彼らの話がもっと良く聞こえるように
体勢をずらして聞き耳を立てた。

「その話はやめろ」

「父さんはあの事件のことを悔いていないのか?
あの事件以来、俺はあなたが怖かった・・・」

「悔いる?なぜ、私が。もう終わったことだ、
悔いたことで結果は変わらん。
なるほどな。だからあの時までは従順だったのだな。」

あの時?

ゆりは、本を鞄に仕舞うとさらに身体を近づけた。

「あの時、お前は私の会社に入ることを反発した。
けれど、結果的にお前は私の言うことを聞いて
会社に入ったのだから今の地位にいるんじゃないのか?」

「・・・」

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