復讐の女神
「それにしても妙だな。なんだかんだ言ってお前は
私の会社に入った。何を今更婚約を破棄しようとする。」

「きちんと恋愛して好きな人と結婚したいと思うのは
道理だと思いますが?」

「遊び好きのお前がか?」

片山課長の父はニヤついた顔になると
笑い声を上げ愉快に笑った。

「女に本気になったことのないお前が今更何を言う。
きちんと恋愛したいだと?だったら今からでも遅くない。
森村さんを好きになればいい」

「彼女は無理だ・・・’」

「なぜ?」

「・・・・・・」

片山課長は黙り込むと一旦視線を父親から別の場所に移動させた。
するとその時、誰かを見つけた。

「他に好きな人でもいるのか?」

父親が聞いても片山課長は返事をしなかった。
彼はずっとその誰かを見つめ、目が離せなかった。

父親は重い溜息をつくと
「情けない。森村さんのような美しい女性に見向きもしないとは・・・」と
愚痴るように言った。

「私は会社に戻る。とにかくお前はここで
森村さんとディナーを楽しめ。分かったか」

そう言うと片山課長の父はソファーから腰を上げ、
ホテルを後にした。

するとタイミング良くゆりの携帯に石井から電話がかかってきた。

「今、どこにいますか?
俺、着きましたけど・・・」

「あ、は、はい!すぐ行きます!」

ゆりは携帯を耳に当てながら急いでホテルを出ると
待ち合わせ場所に向かったのだった。
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