復讐の女神

「七瀬さん、大丈夫っすか？」

ゆりは、またカルピスサワーを一口飲むと
「やっぱ仕事終わりのカルピスサワーは最高ですねー」っと
可愛い笑顔で石井に言った。

「あ、そ、そうですか。あぁ、じゃぁ、あの」

石井はゆりの急変に動揺したがもう一度機を取り直すと

「じゃ、じゃぁ、七瀬さんの好きな人を教えてくださいよ」聞いた。

「え？好きな人って？」

「前、一柳さんに言ったそうじゃないですか。好きな人がいるって。
どんな人なんですか？告白はしたんですか？それとも・・・」

すると陽気な顔から一変してゆりは無表情になった。

「告白はしたことはないです。」

「じゃぁ、これからするとか？」

「それもないです」

「え？想いを伝えないんですか？」

「したくても出来ないんですよ・・・」

「え？それって・・・」

ゆりは、伏し目がちになると
「彼は死んだんです」と言った。

石井はまずいと思い、「あ、すいません！話題を変えましょう。
えーとですね」と言ったがゆりは気にすることなく喋り続けた。

「会ったのは今から30年前、私が6歳の時。涼くんは2つ上の8歳で
明るく元気のある男の子だった。でも、親から疎んじられてて
時々苦しそうな顔をしてた。そのギャップに私は子供ながら彼をほっとけないと思った。」

「七瀬さん、もう良いっすよ」

「私がいけないの。私が彼を森に連れ出したから迷子になって。
私が目を離した隙に彼は・・・川で溺れ死んだの。」

「もういいですよ、七瀬さん」

するとゆりの目から一筋の涙が頬を伝った。

「私があの時、彼に逃げようって言わなければ
彼は命を落とすこともなかったのに。私のせいで・・・
私のせいで・・・、まだたったの8歳なのに・・・」

ゆりの目からは止めどなく涙が溢れた。

「七瀬さんは何も悪くないですよ。だから、ね。もうやめましょう。ね？」

石井が優しくゆりに言うとゆりは顔を上げ石井を睨むように言った。