復讐の女神
「何よ、好きな人が知りたいって言ったのは石井さんじゃない!」

「な、七瀬さん・・・」

ゆりは、悲痛な顔で更に涙を流すと
「なんでこんな話をさせるのよ・・・。
なんで思い出させるのよ・・・」と石井を訴えた。

「ごめんなさい、七瀬さん。俺、そんなつもりじゃ・・・」

ゆりは、涙を堪えるように更にカルピスサワーを飲んだ。

酔っ払ったゆりは、石井の予想を遥かに上回っていた。
こんなはずではなかった。

石井はどうしようと思っているとゆりは
とうとう身体の自由がきかなくなり、そのままテーブルの上に
突っ伏すように倒れこんだ。

「な、七瀬さん!大丈夫ですか?七瀬さん!」

石井は驚いて、ゆりを抱き起こすと
ゆりの呼吸は荒々しく一人ではどうにも出来ない状態になっていた。

「七瀬さん、酒弱かったんすね。大丈夫ですか?」

「はぁ・・・はぁ・・・」

ゆりは、あまりにも酔い潰れてしまい、言葉を発することが出来なかった。

石井は口角を上げるとゆりが逃げられそうにないことを良いことに
本音を言い始めた。

「さっきは、店員にアルコールを強めに入れるよう頼んでおいたんですよ。
七瀬さんが酔い潰れてくれたのは好都合です。安心してください。
さっき七瀬さんが行ったグランドホテルで宿泊の予約をしてあるんです。
七瀬さん、辛そうなのですぐ向かいましょうか。」

石井はゆりを抱きかかえると会計を済ませ、
そのまま彼女を支えながらグランドホテルへと歩き始めた。
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