復讐の女神
片山課長は会計を済ませ、森村を連れて
ロビーに向かって歩き始めた。
ホテルを出ようとしたその瞬間、
知ってる人が入れ違いにホテルに入ってきたのが見えたのだった。

思わず驚いて片山課長は後ろを振り返った。
森村も片山課長の異変に気付き、一緒に後ろを振り返った。

「あれは・・・石井さんじゃないですか?
隣で抱き抱えられてる女性は誰なんでしょう」

森村がそう言うと片山課長は何かを思いついたのか
「森村さん、すいません。今日は一緒に行けません。
タクシーを呼びますので一人で帰ってください」と言った。

「え?」

すぐさま片山課長は彼女の肩を持ち、急いでホテルの外まで連れて出ると
近くに止まっていたタクシーを呼び、森村を送るように指示をした。

「ちょっと待ってください!この前の歓迎会だって
こうやって私だけタクシーに乗せて帰らせたじゃないですか。
また、あんな辛い思いをするのはこりごりです」

急に態度を変え、森村がごねたので片山課長は驚いた表情をした。

「お願いです。今日だけでも私と一緒に・・・」

「申し訳ないが急用を思い出したんで。お願いだから乗ってください」

片山課長の気迫に圧倒され、しぶしぶ森村はタクシーに乗った。

森村の乗ったタクシーを見送ることなく
急いで片山課長はグランドホテルの中に再び戻ったのだった。
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