復讐の女神
その頃、石井はゆりを抱えながら受付の前で話をしていた。

「今日の宿泊で予約をしていた石井ですが・・・」

「石井様ですね。今、部屋を確認いたしますので
少々お掛けになってお待ちください」

石井は、ゆりをゆっくりソファーの上に座らせると
自分もその隣に腰掛けた。

すると目の前に息せき切った片山課長が立った。

石井は見上げると息を切らした片山課長が立っていたので
驚いた。

「なんで、片山課長がここに・・・」

「石井こそ、ここで何をしている。」

「ここでって・・・」

石井は口ごもって隣で眠るゆりの方を見た。

「七瀬さんをどうするつもりだ?」

「いや、どうするって。たまたま一緒に飲んでたら七瀬さんが酔い潰れたんで。
この状態じゃ帰らすことも出来ないんでここで休憩させようかなと思って・・・」

すると受付係が石井を呼んだ。
呼ばれた石井が受付に向かった隙に
片山課長はゆりを抱え、お姫様だっこのように持ち上げた。

「うわっ、あの人何して・・・」

驚いた石井はすぐさま片山課長のところに戻ると
「何してるんですか!?」と怒鳴った。

「石井こそ、七瀬さんに何するつもりだったんだ?」

「何するって・・・。介抱するために・・・」

「悪いが七瀬さんは俺が引き取る」

「はぁ!?」

「石井はさっさと一人で部屋に行け」

「そんなこと出来る訳がないでしょーが!七瀬さんを降ろしてくださいよ」

「それは出来ない」

そう言ってゆりをお姫様だっこをしながら
ホテルを出ようとした片山課長を
石井は彼の肩を掴んで引き止めた。
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