復讐の女神
片山課長は肩に置かれた手を見た後、
石井の方を振り返った。

「マジで、七瀬さんだけは譲れないっす。彼女を返してください」

片山課長はため息をつくと
「お前の魂胆はお見通しなんだ。このまま彼女を石井に渡したら
彼女が傷つき悲しむのは目に見えてる。
石井だって七瀬さんを困らせたくないだろ」

「七瀬さんは多少困ってもなんだかんだ言って俺を受け入れてるんです。
だから、彼女が傷つくことも悲しむこともないです。
次の日には二人は恋人同士になってるかもしれませんよ」

「身勝手な考えはやめろ。七瀬さんを助けるために
このまま彼女を送っていく」

「そう言って七瀬さんをモノにするんじゃないんですか?」

「は!?」

「本当は片山課長は七瀬さんのことが好きなんすよね?」

「馬鹿馬鹿しい。部下を助けるためだ。」

そう言うと片山課長は歩き始めた。

「本当にそれだけの理由ですか!?」

石井は片山課長の背中に向かって叫んだ。

「じゃぁ、なんで歓迎会の時、森村さんや越川さんを呼んだんですか!?」

片山課長は、足を止め石井の方を振り返った。

「ずっと変だと思ってたんですよ。なんで関係ない部署から二人を連れてきたのか。
森村さんだけだと変だから越川さんはカモフラージュで呼んだんすよね。
本当は森村さんとの仲を七瀬さんに見せつけたかったんすよね。
それだけ、片山課長は七瀬さんを意識してるってことっすよね?」

片山課長は「なんのことか分からないな」と言うと前を向き石井を見ることなく
「早く部屋に行け」
と言ってそのままホテルを出たのだった。

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