復讐の女神
「石井とグランドホテルの中で会ったんだ。」

「グランドホテル?」

「酔った七瀬さんを抱きかかえながら、
石井はグランドホテルで宿泊しようとしてたんだ。」

「え!?」

全く記憶がないゆりは、知らない間に
石井の策略にまんまと嵌ってしまうところだったと思うと
恐ろしくなって身体中鳥肌が立った。

「七瀬さんの同意の上じゃないと思ったから俺が止めたんだ」

「そうだったんですね。全く知らなかったです・・・。すいません」

「七瀬さんは俺の言うことを聞いてなかったのか?」

「え?」

片山課長の不機嫌な態度にゆりは驚いて彼を見上げた。

「警告したよな?あいつに気をつけろって・・・」

「・・・・」

「俺が止めなかったらあのままどうなってたと・・・」

「そんなことよりも森村さんはどうしたんですか?」

「は!?」

話の腰を折られ、片山課長の不機嫌な顔が更に不機嫌になると
ゆりは気にすることなく続けて言った。

「今日は、森村さんとディナーをする予定でしたよね。
森村さんとなんで一緒にいないのですか?」

ゆりは彼を言い負かすくらいの反論が出来て少し得意げな顔になった。

「なぜ、それを・・・。」

片山課長は少し思案すると思い出したように
「もしかして、あの時俺と父さんとの会話聞いてたな。
どうりで似てる人がいると思ったんだ。変装していたから確信は持てなかったが・・・」
と今度はゆりを軽蔑するような顔で言った。

「たまたま聞こえたんです。石井さんが来るまで時間あったので、あそこで読書してたら
たまたま二人が近くに座って来て話が聞こえてきたんですよ」

「どうだか・・・・」

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