復讐の女神
「森村さんをほったらかしといて人の心配ですか?」

反撃するようにゆりも彼と同じような軽蔑する目で彼を見た。

片山課長はため息をつくと
「話聞いてたなら分かってるだろうが俺は森村さんを愛してない。
だから、石井をグランドホテルで見かけたとき、
彼女をタクシーで送って、俺はその後ホテルに戻ったんだ。」と
面倒臭そうに話した。

「だから、なんでそこで私を助けたりするんですか!
ほっとけばいいじゃないですか!」

「放っておけるか!」

そう怒鳴られてゆりはびっくりして萎縮した。
恐る恐るも怪訝そうに「なんで?」と彼女が聞くと
片山課長は「一応、部下だからな」と応えた。

「え?」

ゆりは更に訝しがった。

「七瀬さんは、俺の部下だから困ってたら助けるのが上司の務めだろ」

ゆりは、自分では気づかなかったが片山課長のその言葉に内心ショックを受けた。

「あぁ、そうですか。面倒見が良いですね」

そう応えるのが精一杯だった。

「まぁ、いい。この話はこのくらいにして、そろそろ帰ろう。
七瀬さんの家まで送るよ。」

「いえ、結構です。」

「遠慮するな。女の夜道は危険だから送る。立てるか?」

片山課長は手を差し伸べたがゆりはそれには目もくれず
ゆっくりと立ち上がった。

「あっちです」

そう言うとゆりは片山課長に背を向け、
自分の家に向かって歩き始めた。
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