復讐の女神
「それにしても片山課長って面倒見が良いですよね。
部下から慕われる気持ちも分かる気がします。」

そうゆりが言うと石井の表情は一変して真顔になり
「もう、あの人の話はしないでください」と冷たく言い放った。

「え?」

「七瀬さん、俺、七瀬さんのことが好きです」

「・・・・・え!?」

突然の告白に驚き、思わずゆりはフリーズしてしまった。

「本当は、あのサシ飲みの時に言う予定だったんすよ。
でも、予想以上に七瀬さんの酔いが早くて言えなかったんすけど。
もし、良かったら俺と付き合ってくれませんか?」

「え、あの、ちょっ、え?」

「もちろん、七瀬さんとは10も違うし、俺のこと
頼りないガキくらいにしか思ってないとは思いますが・・・。
俺、真剣に七瀬さんとの将来のことも考えてるんです。
最近は遊びも控えて貯金してるし、十分七瀬さんを養っていけるだけの
財はありますんで!」

「あ、あのー石井さん・・・」

「すぐにとは言いません。俺とのこと考えてくれませんか?」

そう言い切られてゆりは返答に困ってしまった。

「じゃ。お疲れっす」

そう言うと石井は早々と去ってしまった。
ゆりは1人取り残されると「あぁ、なんでこんなことに・・・」と呟いて
泣きそうになりながら事務所へと向かった。

「なんでこうも次から次へと問題が起こるかな、前途多難」

余計な情を増やして計画に支障をきたしたくなかったゆりは、
重い溜息をつくとこれから先どうしようかと頭を抱えた。
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