復讐の女神
その日の夕方、一部の社員だけで飲み会が開かれることになった。
石井はラ・フルール・ブランチェの案件で立て込んでいたため、飲み会を断った内の1人だった。
19時頃になると段々と人がフロアから消えていった。
気づくとゆりだけが残されていた。

するとスマホを片手に電話をしながら片山課長が入ってきた。
「あー悪いが仕事が終わりそうにないんだ。悪いけど俺は抜きで楽しんできてほしい。
じゃぁ、また」そう言うと電話を切り、スマホをポケットの中に入れた。

ゆりが気になって片山課長の方を見ると
彼は察して「あー森村さんからだよ。今日、飲み会があるんだと」と言った。

「飲み会なんてあったんですか?行かなくて良いんですか?」

「飲み会のこと知らなかったのか?まぁ、いいや。
七瀬さんだけ置いて飲みに行けないだろう、さすがに」と
ここでも面倒見の良さを発揮した。

「私は大丈夫ですので行ってください」

「何よりもまず仕事が優先だろ。何が終わってないんだ。ちょっと見せてみろ」と言って
ゆりが持っていた資料を取り上げた。

「なんだこれは?」
片山課長が訳が分からないという顔で資料を見ていたので
ゆりは彼の方を見上げながら説明をした。

「ラ・フルール・ブランチェの商品の明細です。それを納品先の指定の場所に配置するのですが
どのコンテナにあるかを探して仕分けなければならなくて。商品の数が1,000種類位あるので
それを一つずつ探し分けようかと」

「そんなことしてから午前様になるだろ。この商品に品番は?」

「あります。その品番ごとに分けられているので。あとこれがバンニング明細と
これが配置図です。」

「わかった。これは俺がやるから七瀬さんはもう帰っていいよ」

「え!?こんな膨大な数を片山課長1人に任せるなんて出来ませんよ。」

「今夜中にマクロで仕分けておくから大丈夫だ」

「マクロって何ですか?」

「エクセルの機能だ。マクロが作れれば後は簡単だから」

そう言うと書類を持って自席に着こうとした。

「あ、あの!もともと私の仕事なんで片山課長に丸投げすることは出来ません!
私に出来ることがあれば手伝いますんで!」

ゆりの気迫に押され、片山課長は少し思案した。

そして「じゃぁ、マクロ作ったら仕分けのやり方を説明するから
それをお願いしようかな」と応えた。

「あ!はい!やります!」
ゆりは元気いっぱいに応えた。
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