復讐の女神
その様子を見た片山課長は更にあることを思いついた。

片山課長はゆりに近づくと隣の席の椅子を引き寄せ、
ゆりの隣にまで近づき、腰掛けた。

急に近づいて隣に座って来た片山課長の行動に驚いて
ゆりが訳が分からずキョトンとしていると
片山課長は机上に片肘を立てその手に頭を乗せると
意地悪そうな顔でゆりの方を見つめた。

「マクロを使って仕分けるのは簡単なんだよ。
ただ俺がプログラミングで作ったボタンを押すだけだからな。
子供でも出来る」

ゆりは片山課長に見つめられて
息を飲んだ。

「それだけだと仕事にならないから、
七瀬さんには今夜俺に付き合ってもらう。」

「つ、付き合うとは・・・」

「行きたい場所があるんだ」

そう言われ、仕事の大部分を手伝ってもらうことになった以上、
ゆりは彼の誘いを断ることが出来なかった。


片山課長に連れて来られた場所は、東京の夜景が一望出来る
高層ビルの中にあるオーセンティックバーだった。

グランドピアノの奏でるクラシック音楽が
更にバーの中を高級感漂う大人のシックなムードで満たしていた。

馴染みのあるバーテンダーだったのか
カウンター席に着くと片山課長はそのバーテンダーに挨拶した。

「古賀さん、いつものお願いします」

「おードライマティーニか。まかしとけ。そちらのお嬢さんは?」

「部下だ。七瀬さんは、ここに座って」と言って隣の席に座るよう指示をした。

「へー、片山くんのお気に入りの場所だから婚約者も連れて来たことがないのに
部下を連れて来るなんてなぁ。本当にただの部下かい?」

ニヤニヤしながら古賀が聞くと
ぶっきらぼうに「そうだよ。」と片山課長は応えた。

「七瀬さんは何飲む?」

「私は・・・カルアミルクで」

「はいよ!カルアミルクね!」

そう言って古賀はカクテル作りに取り掛かった。

「雰囲気いいだろ。仕事の帰りにたまに寄るんだ」
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