復讐の女神
「はい、素敵なところですね。こんな高級なとこ入ったことないです」

「そうか。それは良かった」そう言って片山課長はフッと笑った。

するとカウンターにドライマティーニとカルアミルクが置かれた。

「乾杯しよう」

「はい」

そして、2人はグラスを軽くぶつけて乾杯した。

バーテンダーの古賀は二人に気を遣って遠くの場所にいき
別のところで接客を始めたようだった。

「お気に入りの場所なんですよね?私を連れてきて大丈夫だったんですか?」

「あぁ、まあな。」
濁すように片山課長がそう応えると
彼は苦しそうに何かから解き放つように
ネクタイを緩めた。

すると、片山課長は、ぼーっとしながら並べられたボトルを見つめた。
その整った彼の横顔にゆりは動揺せずにはいられなかった。
ゆりは、ふと目を逸らした。彼から逃げるように、自分を守るために。

ドライマティーニを飲み干すと
片山課長はギムレットを頼んだ。
そしてギムレットも一気に飲み干すと
アンダルシアを頼んだのだった。

あまりの飲みっぷりにさすがにゆりは心配になった。

「そんなにさっきから強いお酒ばっかり飲んでたら
すぐ酔ってしまいますよ!」

その言葉に反応したのか
片山課長は流し目でゆりの方を見ると
「俺は酒が強いから大丈夫だ。七瀬さんと一緒にするな」と
少し嫌味を含めて言った。

ゆりは、心配して損したという顔をすると
「あーそうですか。」と応えた。
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