復讐の女神
すると、片山課長はフッと笑うと
今度は真顔で徐々にゆりの方に顔を近づけていった。

あと数センチで唇が触れると言うところまで
2人は近づいた。
けれど、ゆりは戸惑うことも目を逸らすこともせずに
ただ片山課長の行動を冷静に間近で見ていた。

片山課長は寸止めした状態で何を思ったのか
顔を離すと「つまんない女だな」とぼやいた。

「え?」

「大抵の女は顔を近づけると恥ずかしそうにするのに
七瀬さんは無表情のまま俺を見てくるから。
このまま俺にされても良かったのか?」

「きっとからかってるんだなと思ったので
動揺しませんでした」

「そうか」
そう言うと少し笑ってからアンダルシアを飲んだ。

「じゃぁ、試してみるか?」

「え?」

すると片山課長はゆりの後頭部を持つと
自分の方に引き寄せた。

さすがに強引な彼にゆりは驚いて目を見開いた。

片山課長は色っぽい目でゆりを見下ろすと
「今日だけ俺と寝てみるか?」と言ってきた。

「え!?何を言って・・・」

「今夜、七瀬さんを抱きたい・・・」

「・・・・・・」

ゆりがフリーズして何も言えずにいると
片山課長は飽きたのか、ゆりから離れて
アンダルシアを飲み干した。

「次、マルガリータで」

片山課長は古賀に頼むと
すぐゆりと向き直った。

「片山課長、酔いすぎですよ。この辺で・・・・」

「大抵の女は喜んで俺に抱かれるんだけどな。
七瀬さんはお堅いな」と言うと愉快に笑った。

カウンターにマルガリータが置かれると
片山課長はそれを一口飲んだ。
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