復讐の女神
「七瀬さん、危なっかしいから放っておけない・・・」

甘い切ない声で言われてゆりは動揺を抑えるように
目を伏せ、俯いた。

「あの、もうからかわないでください」

「からかってないよ」

ゆりは意を決して片山課長の方を見た。

「危なっかしいって。私はもう36なんですよ!子供扱いしないでください!」

「そう言って現に石井にホテル連れ込まれそうになっただろ?」

片山課長にあしらうように言われると
ぐうの音が出ずゆりは反論出来なかった。

ゆりは質問を変えた。
「じゃぁ、部下として私をほっとけないんですか?」

「あぁ、そうだ。監督責任があるからな」

「理屈で物を言わないでください」

ゆりはそう言うと彼から顔を背け、俯いた。

「本当に部下として放っておけないなら今日はもう帰ってください。
私は大丈夫です。
経緯報告書仕上げるだけなので私一人だけで出来ます。」

そう言うとゆりはパソコンに向き直った。

ゆりは、片山課長を気にするなことなくキーボードを打ち始めた。

ゆりの素っ気ない態度にどこか切なさが宿っていた。
片山課長は、ゆりを観察するように隣でゆりを見つめた。

片山課長がまだ帰ろうとしないので、
ゆりは我慢できなくなり、立ち上がると
「今日はもう帰ります!あとは家に持ち帰って仕上げますので」と言って
カバンを持ち上げた。

「失礼します!」

そう言うとゆりは、事務所を後にした。
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