復讐の女神

懺悔

週明け月曜日、石井は出勤すると真っ先に片山課長の元に向かい、
報告をした。

「本当に有難うございました！助かりました！」

石井がお礼を言うと片山課長は申し訳無さそうに
「いや、苦労をかけて悪かった。経緯報告書は出来てるから先方に
持って行って欲しい」と言った。

「あ、はい！有難うございます」

「あと、この経緯報告書は七瀬さんが遅くまでかけて作ったから
彼女にもお礼言っとけ」

「え？七瀬さんが？」

石井は一瞬驚いたが、経緯報告書を受け取ると
「はい、分かりました。有難うございます」と応えた。

ゆりが出勤し、事務所に入ってくると
「七瀬さん、ちょっと」と言われ石井に呼び出された。

二人でラウンジに行くと
石井はゆりと向かい合い、まず謝った。

「すいません！俺、気が動転してて。
七瀬さんに辛くあたってしまってすいません！」

腰を曲げて謝る彼の姿を見てゆりは驚き、
思わず両手で手を振って否定した。

「い、いえ！私の手配ミスなのでご迷惑かけてすいませんでした！」

「いや、なんとか間に合ったから良かったですよ。
それに経緯報告書の作成も有難うございます」

「いえ。この後、また行くんですか？」

「はい。経緯報告書を持って謝罪がてら様子を見に・・・」

すると二人の間に一瞬沈黙が起きた。

石井は気まずくなって「じゃぁ、俺行きます」と言うと
ゆりは彼の名を呼んで引き止めた。

「あの・・・この前の返事ですけど・・・」

石井は彼女の方を振り返ると緊張のあまり思わず唾を飲み込んだ。

「ごめんなさい。石井さんとはお付き合い出来ないです。ごめんなさい」

「あ、いえ・・・」

石井は予想してたこともあり、ショックではあったが
あまり驚かなかった。

< 83 / 122 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop