復讐の女神
「やっぱ、俺じゃ頼りなかったすよね?」
石井が苦し紛れに笑って言うと
「いえ、そんなことはなかったですけど、すいません」と
ゆりは謝った。

「いえ、大丈夫ですよ。こちらこそ、七瀬さんを困らせてすいませんでした。
これからは会社の仲間として仲良くしてください」と言うと
石井は踵を返し行ってしまった。

ゆりは彼の背中を見送ると
携帯のバイブが鳴ったので、
ゆりは携帯の画面に表示されたメッセージを見た。

すぐに使われていない会議室に向かうと
周りに誰もいないことを確認し、静かに中へと入って行った。

「どうだった?」

既に会議室にいた片山課長が聞いてきた。

「大丈夫。ちゃんと断ったわ。」

「それは良かった」

片山課長はゆりに近づくと彼女を抱き寄せ、
彼女の顎に手を添え、くいっと自分の方に上げた。

「ゆりにぞっこんだった割には、あっけなかったな」

片山課長が至近距離で見つめながら言うと
「さぁ、案外私のことそんな好きじゃなかったんじゃない?」と
ゆりはクールに応えた。

「冷たい女」
意地悪そうに笑って片山課長はゆりにキスしようとした瞬間、
ゆりが手でそれを制した。

片山課長はそれに驚いてゆりの目を見た。

「今度は、弘樹さんの番よ。婚約を破棄して」

しけたことを言われたみたいに片山課長は嫌な顔をすると
「分かったよ。そのうちな」と応えた。

「そのうちって、いつなの?いつまで私は森村さんのことを気にしてなきゃいけないの?」

「気にすることはない。俺が好きなのはゆりだけなんだから。
それに婚約破棄はそんな簡単に出来るもんじゃないからもう少し待って欲しい」

「弘樹さん!」

「ったく・・・」
片山課長は呆れようにそう言うと
ゆりを抱き締め激しくキスをした。

首筋にもキスをしてゆりの身体はゾクッとして
一瞬身体が震えた。
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