復讐の女神
「早くっ、事務所に戻らないと・・・」

「全然足りないな、こんなんじゃ」

「職場なんだから我慢してよ」

ゆりが悲しげな目で訴えると
片山課長が真面目な顔で言ってきた。

「今夜、ゆりの家に行って良いか?」

「え?」

「ダメか?」

「ダメじゃないけど・・・。大丈夫なの?」

「あぁ、仕事が長引きそうだから夕飯は一緒には食べれないが
終わったらゆりの家に行く。良いか?」

「ええ、待ってる。」

「そうか、なら良かった」

片山課長は嬉しそうな表情をすると
ゆりの方をもう一度真顔で見つめた。

「な、なに?」
ゆりが不気味に思って聞くと
「無理してないか?」と片山課長に言われた。

「え?」

「いや、あまりにも展開が早いから、そのー
無理してるんじゃないかと思って・・・」

「まさか!」

一瞬、心を見透かされたのかと思いゆりはドキっとした。

「そんなことない。今夜二人っきりで会えるの
楽しみにしてる」

そう言うと、ゆりは事務所に戻るため
後ろを向いた。

片山課長は後ろからゆりを抱きしめると「愛してる」と呟いた。

ゆりも「私も愛してるわ」と嬉しそうに言うとすぐに
企みを秘めた怖い表情に戻し、会議室を後にした。
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