復讐の女神
「と、まぁそんな感じです」
一通り説明が終わるとゆりはお礼を言って自分の席に戻った。

二人の距離が離れてしまったことに少しの寂しさを感じ
石井はゆりを見つめた。

すると、定時刻を知らせるチャイムが鳴った。
ゆりの帰る時間になったのだった。

「じゃぁ、今日はもう帰って大丈夫だよ」
いつの間にいたのか、ゆりの後ろから片山課長が声をかけた。

「あ、はい。分かりました」
驚いてゆりは返事をするとみんなに「今日はお疲れ様でした」と声をかけ
事務所を後にした。

その後に元気な挨拶をして星めぐみも帰って行った。

二人がいなくなった事務所内で先に口を開いたのは山田だった。

「なー、そっちはどうだったんですか?」

すると石井が「いやー最高だよ!」と応えた。
「石井先輩、顔真っ赤でしたもん。俺、目の前で噴きそうでした」とニヤニヤしながら
太田が揶揄した。

「うるせーな!そういうお前も七瀬さんの方をガン見してたじゃねーかよ」
「綺麗な女性は見てて飽きないっすからねー。ってか、どちらかと言うと少女ですよね!」
「だよな!マジ七瀬さん、童顔!」
「やべー犯罪の匂いがします」と
石井と太田で盛り上がった。

「マジ羨ましいっす。変えてほしいっすよ」と山田が二人に近づいて言ってきたので
「じゃぁ、そっちの23歳はどうだったんだよ?」と石井が聞くと
「キャピキャピしててマジうるさかったっす」とげんなりした様子で山田は頭を垂れた。
みんながそれを見て笑っていたが一柳はその場に水を差すように言った。

「でも、七瀬さん好きな人がいるみたいですよ」

「「え!?」」

その場にいた男性陣が一斉に一柳の方を向いた。

「え?何言ってんだよ七瀬、彼氏いないって言ってたぞ」

「でも、彼氏はいないけど好きな人はいるって言ってたのよ」

「えーマジか!?ショック!」太田は大袈裟に頭を抱えた。

「ってことは、片思いってことか。七瀬さん一途だなぁ」と石井が言うと
「あ、そういう純粋な女性好きっす」と太田が嬉しそうに応えた。


「じゃぁ、まだ、狙える隙はあるってことだな」と独り言のように
呟く石井を片山課長は怪訝そうな顔で見たのだった。
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