復讐の女神
社員旅行の日になった。
バスが草津に着くとゆりは一人湯畑の方に向かった。

硫黄の煙が立ち込める場所でゆりは店を散策しながら
自由気ままに歩いていた。

するとお土産屋の中でゆりは一柳や星たち一行と
偶然出くわした。

一柳と女性陣がゆりを避け、別の場所に移動すると
星めぐみだけはゆりに近づき、声をかけた。

「七瀬さんいたんですね!楽しんでますか?」

恐らく一人でも楽しめるのですかというニュアンスを含んでの聞き方だった。

「うん、楽しいよ。星さんは、みんなと来てるんだね」と
気にした素振りを見せず、ゆりは返答した。

星は周りを気にしながら辺りを見渡すと
ゆりに近づき小声で話をしてきた。

「実はですね、とても言い難いんですけど・・・
七瀬さん、会社のみんなに嫌われてますよ」と言ってきた。

「え?」

ゆりにとって思いも寄らなかった衝撃的な言葉に
一瞬戸惑いを隠せなかった。

「え?それはどうゆう・・・」

「みんなが噂してたんですけど・・・。
七瀬さんって石井さんと飲みに行ったことありますよね?
その後すぐ位に片山課長とも一緒にいたところを会社の人が目撃して・・・。
めっちゃ男好きの女だって思われてますよ」

「え!?」

「特に片山課長には森村さんという婚約者がいるのに
七瀬さんが狙ってるからみんながもう怒っちゃって。
だから七瀬さんに嫌がらせをしようとか
話してたんですよー」

ゆりはあまりのショックで声を発することが出来なかった。
ラ・フルール・ブランチェの納品日の件。
自分にだけ社員旅行の連絡が来なかったこと。

考えれば思い当たる節はあったが
まさか自分が嫌われていたとは露ほども思わなかった。


< 91 / 122 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop