復讐の女神
「本当に申し訳ないんですけど、これ以上七瀬さんと一緒にいることが知れたら
私の立場も危うくなるので・・・。これで失礼します」

そう言うと星はそそくさと一柳たちの方に行ってしまった。
星が戻ると何かを報告されたのか一柳はゆりの方を遠くから見ると
人を嘲るような目で笑った。

ゆりは、彼女たちを尻目にそそくさとその場から離れると
外に出て神社がある階段を登り始めた。

ゆりは、俯くと自嘲気味に笑った。
復讐を成し遂げるため、こういうリスクが伴うことも
想像していないわけではなかった。
ただ、孤立してみて初めてゆりは復讐がこんなにも
辛く苦しい道だということを知った。

遼くんのため・・・。
その思いがなければすぐにでも心が折れそうだった。

ゆりがトボトボ歩いていると
境内から降りてくる二人の姿が目に入った。

片山課長と森村さんだった。
二人は笑い合いながら
本当のカップルのように楽しそうに
階段を降りて来るのが見えた。

その光景を見たゆりは、あまりのショックで
心の奥がズキンと傷んだ。

二人もゆりの存在に気づくと、森村は笑顔になって
ゆりに会釈をした。

お互いの距離が段々と近づくたび
ゆりは緊張と今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られ、
つばをゴクリと飲んだ。

「七瀬さんも湯畑に来てたんですね~。意外と階段が多くて登るの大変ですよ」
森村はゆりと同じ段まで到着すると笑顔で声をかけた。

「そうなんですね」
そう返事をするとゆりは森村を見、片山課長を見た。
でも彼は目を合わせてくれなかった。

「頑張ってくださいね!」
そう森村が言うと二人はまた降り始めた。
ゆりはその光景を目にしながらまた心の中で傷つくのであった。

たとえ、偽りの恋愛関係だとしても
今、孤独なゆりとしては、二人が楽しそうにしてる姿は見たくなかった。








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