復讐の女神
夕方、旅館に戻るとゆりの携帯にメッセージが入っていることに気づいた。

片山課長から、「いつ部屋にくる?」という問い合わせのメッセージだった。

「人の気も知らないで・・・」
ゆりは、ベッドの上に携帯を放り投げると浴衣や下着を持って
温泉に出かけた。

女湯に入ると樽や大浴場、露天風呂などのいろんな種類の温泉があった。

ゆりは、身体を洗うと、
一人温泉に浸かった。

「ふぅ・・・」

温泉に入るとともに心の中にあった嫌な気持ちまでもが
一気に浄化された気分になった。

するとまもなくして、ふたりの女性が入ってきた。
森村と越川だった。

二人はゆりの存在に気づくと会釈をした。

ゆりも会釈を返すと
その場にいるのが気まずくなったので、露天風呂の方に逃げた。


露天風呂は周りが岩や草で覆われているため
街を見渡すことが出来なかったが
空を見上げると一面に広がった星がキラキラと輝いていた。
ゆりは星空を見上げながら、以前片山課長がゆりを家まで
送ってくれたことを思い出していた。

あの頃はあの人に対して復讐の相手としか考えてなかった。
でも、今は・・・・?

その答えを知るのが怖くてゆりはお湯を両手で掬い上げると
顔にかけた。
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