復讐の女神

幸せに触れて

部屋に戻るとゆりは、小瓶から睡眠薬を取り出し
浴衣の裾の中に入れた。

鏡を見ながら一つ深呼吸をすると
「よし」と言って心を落ち着かせた。
すると今度はゆっくりとカバンの中から
隠し持っていたナイフを取り出した。

ゆりは、一度ナイフの歯を確認したあと、
歯を折り曲げ仕舞い、胸の中に隠した。

ゆりは目を閉じ、浴衣の上から手で胸を押さえると
「いよいよ、この時が来たのね・・・」と
呟いた。

やっと、遂にチャンスがきた・・・。
そう、決意するとゆりは部屋を出て、
片山課長のもとに向かった。

ドアをノックする音が聞こえ、
片山課長は覗き穴で確認すると
扉を開けた。

すぐにゆりを部屋に入れると
「気づかれなかったか?」と聞いた。

「えぇ、大丈夫」
そう言うとゆりは、ゆっくりと部屋の中に入り、
ソファに腰掛けた。

「なんで、返事しなかった?」

「え?」

「メッセージ送っただろ?」

「・・・・ごめんなさい。温泉入ってたから返事するの忘れちゃって・・・」

「そうか」

ゆりの返答にあまり納得はしていなかったが
片山課長は何かを察したのかゆりの隣に腰掛けた。

ゆりの手を取ると、その手を優しく握り
ゆりの顔を覗き込みながら「昼間はごめんな」と優しく声をかけた。


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