復讐の女神

隠された真実

ゆりは、受話器を置くとリビングに向かった。
涼との楽しかった生活、それがもう出来なくなってしまうのではないかという不安が
幼きゆりの頭の中を過ぎった。

ゆりは、リビングの扉を開けると
心配そうな顔でゆりを待っていた涼と目があった。

「さっきの電話なんだったの?」

ゆりは、重い口を開いた。

「親が帰ってくる」

「え?」

「とりあえず、おばあちゃんの容体が良くなったから
一旦家に帰るって」

「え?じゃぁ、ここに来るの?僕のことは?」

「言おうとしたけどまだ言ってなくて、戻ってきたら話そうかと思って・・・。
でも!本当のことは言わない!出会った時のこととかは言わないで、
近所の子が泊まりに来てるって話そうかと思うの!」

ゆりは、彼を引き止めるような力強い口調で言った。

「だから、ずっとここで親と一緒にいよう?」

「無理だよ・・・」

「え?」

涼は、全てを諦めたような暗い表情でゆりに話し始めた。

「それは、無理だ。ずっと僕がここにいたらいつか親のことを聞いてくる。
だけど、僕が親の話をしたら父さんに迷惑をかけてしまう。
そんなことになったら僕、折檻されるんだ。そんなの嫌だよ」

「セッカンって何?」

「殴られるんだ。ボコボコにされるし、蹴られる。
僕が悪いことをすると痛めつけて叱るんだ」

「そんな・・・」

「僕、ここから出るよ」

涼は、ゆりの隣を通り過ぎ、リビングを出ようとした。
するとゆりは、すぐさま涼の手首を掴んで引き止めた。

「出るってどこへ?行くとこなんてないのに・・・」

涼は溜息を吐くと「・・・どっかで野宿するよ。だから大丈夫」と
ゆりを見ずに言った。

ゆりは、孤独な涼の悲しそうな横顔を見て
いてもたってもいられなくなった。

「ゆりも一緒に行く!」

「え!?」
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