武士(もののふ)は黙して座する
然程険しくもない山道を、僧侶は錫杖の音を立てて登っていく。

シャリン。

シャリン。

涼やかなその音は、山の静寂を切り裂く。

暗闇を清めるように。

かつての血塗られた古戦場を鎮めるように。

やがて。

僧侶は山頂へと辿り着く。

石垣、五段ほどしかない石段。

それが今も残る御影城の唯一の名残。

ここで多くの城の者が逃げまどい、阿鼻叫喚のうちに斬殺された。

その中には女子供もいたという。

罪もなく、ただ侵略という理由で葬られた者達。

それを守りきれなかった城の武士達。

その無念、如何ばかりか。



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