武士(もののふ)は黙して座する
しかし。

「今を生きる者達に仇なしちゃあいけねぇよなぁ…」

独り言のように呟き。

僧侶は城跡を取り囲む木々に、懐から取り出した札を貼り付け始めた。

護符。

魔性に対して霊的な力を発揮する。

僧侶が張り付けているのは、四方に貼る事で強力な結界を形成する結界符だった。

「いるんだろ?出てこいや」

結界符を貼り終え、僧侶は石段の辺りを睨む。

その言葉に応じるように。

「…そのような結界を張らずとも逃げはせぬ」

スゥッと。

夜の闇の中から一人の男が姿を現した。






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